西川登町矢筈 松尾ハルさん(大 5生)

 あの、あがんとやろうだいなたあ、

「お()さんの死んじゃったけん、坊さん使い行って()い。

黒か着物ば着とんさっ。そがん人のおんさっ」て言われたて。

烏に言わしたてなたあ。そいぎぃ、烏が、

「コーカ、コーカ」て()うたてぇ。

「いんにゃあ、子じゃござらん。親でござんすっ」ちなたあ、聞きおったごたったあ。

また家に戻って、そいぎぃ、

「『子か親か』て言うた」て言う。そいぎぃ、

「まいっちょ行たて来い」て言われて(牛ねぇ)、

「モウー」て言うたてぇろうてぇ。そいぎぃ、

「もうじゃござらん。今でござんす」

そうぎにゃあ、

「わが行たて来っけん、飯ば炊きおれぇ」て言うて、

親父さんが行きんさったあ。そいぎぃ、

「ブッツクウター、ブッツクウター」て、言うたいすっもんじゃっけん、

そいが、ぶっつらーてついともんじゃっけん、

「ブッツクウター、ブッツクウターいう。こん畜生(つくしょう)」ち、羽釜(はがま)ば投げらしたぎぃ、

「クワーン」言う。

「今のう『クワーン』て言うたっちゃ、(なん)になっかあ」言うたち言う。

そいばあっかい【それでおしまい】。

(出典 未発刊)

標準語版 TOPへ