武雄市西川登矢筈 本山イセさん(明37生)

 婿さんが、

嫁さんの里に行って美味しいものを

食べさせてもらったので、

忘れないように、名前を言うて帰りないよって、

川を「ピントコショ」て言うて渡ったところが、

「あら、さっからんたぁ、何じゃったかにゃぁ

(先程食べたのは何だったかなぁ)。

嫁御の嬶ん家(嫁さんの実家)

で食うたたぁ、何やったかにゃぁ

(何やったろうか)。

ピントコショじゃったろうかにゃぁ」

て言うて、その後は、

「ピントコショ、ピントコショ」て言うて、

自分の家まで帰ってきなったて。

そうして、嫁さんに、

「ピントコショばして食わせろ。我が家行たいば、

ほんに美味かったけん」

ちゅうて言うたて。

そうしたら、

「何でござっすっかぁ。『ピントコショ』ち言うぎ、

何でござっすっかん」て言いなんもんで、

「ピントコショくさんたぁ。

ピントコショも知らんかぁ」ちゅうて、

嫁さんを酷う叩きんさったそうです。

そうしたら、頭に、饅頭のような

太いコブのでけたので、

「お前のくらしたけん(叩いたから)、

饅頭のごと太とーかコブのでけた」

て言わしたら、

「あぁ、その饅頭じゃったたい」

ちゅうて言わしたて。

それで、嫁さんな、饅頭て分かって、

そいを作って食わさせなったて。

(出典 佐賀県文化財調査報告書 第71集「~矢筈・神六の民俗~」p119)

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