武雄市西川登神六 井出安次さん(明37生)

 むかし、あるお寺に、

和尚さんと小僧さんがおった。

ある時、お寺にですよ、どっか死者【しにもん】

のあったけん、

「誰【だい】か死んだけん、葬式に来てくれ」

て来んさったて。

そいぎぃ、そん時きゃぁ、

和尚さんがどこさいじゃい行たて、

おらんやったけん、

「小僧さんでもよかけん、来てくいろ」て言われて、

小僧さんが行ったわけ。

そいて、行ったいどん、まぁ、

何てなっとん言うておくぎよかくさい、

て思うて、ブツブツ言いおらしたいどん、

引導渡す時は何て言うてよかいろう、分からんて。

何回も和尚さんに付いていたいどん分からない。

「引導、何ちゅうじゃったかにゃぁ、もう忘れた。

もう、何でもよか」ち言うて、

こう、上ば見よらしたいば、

上ば見るぎぃ雁が飛んで行きよらしたて。

そいぎぃ、ああ、こうじゃったぁ、て思うて、

「上を見れば雁が飛ぶ。下を見れば旗が飛ぶ。

この旗は一尺五寸。小僧の褌【へこ】によかろう。

カーン」て言いなったて。

そいから先は、

「和尚さんの布褌【へこ】きんする。

またするずんだら褌【へこ】。

母ちゃんのきんなんする」

て言うて、終ったそうです。

(出典 佐賀県文化財調査報告書 第71集「~矢筈・神六の民俗~」p128)

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