和尚と小僧

和尚と小僧 作:竹下久美

 武雄市西川登神六 前田 隆さん(明41生)

 和尚さんが、饅頭が好きで、

小僧さんに食べられんように、いつも、

「俺(おい)が食うとけん(俺が食うものだから)、

お前は食ぶんなうよ(食べたらいかん)」

て言うておられたそうです。

ある時、饅頭がないので、案の定、和尚さんが、

「お前、食うとんにゃぁ」て、

小僧さんに言われたそうです。

それで、小僧さんな、

「俺(おりゃ)ぁ食うとらん。

和尚さんな、如来さんを見らしたかんたぁ

(見られたでしょうか)」て言いなったら、

「見とんもんかい」て、和尚さんが言うので、

「見に行きましょう」て言うて、

和尚さんと一緒に、如来さんを見に行ったら、

如来さんの口に、饅頭の餡のいっぱい

付いていたそうです。

それで、小僧さんが、

「ほら、如来さんの口ば見てござい

(見てごらんなさい)。

如来さんが食べとんさったいのう(食べている)」

て言いなったそうです。

それで、和尚さんな、怒って、

如来さんに大きな羽釜(はがま、湯を沸かす釜)

を投げつけんさったぎ、

「クワーン」て言うたので、

今後は小僧さんが、「白状させてやります」

と言って、如来さんを水の中に投げ込んだら、

「クッタ、クッタ」て言われたそうです。

(出典 佐賀県文化財調査報告書 第71集「~矢筈・神六の民俗~」p127)

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