武雄市西川登矢筈 石橋ワサさん(明36生)
和尚さんが、
「隣ぃ、建ち家【たちえ】のあいよっけんが、
そいけん、わいも(お前も)行たて見てこい」
て言いなったて。
そん時、和尚さんな、餅を焼きおったてったいなぁ。
そいぎぃ、小僧さんな、
「俺【おい】に食わすんみゃぁで、
我がばっかいいち食おうでちゃぁ、俺ぇ、
『隣の家の建ちおっとを、見てこい』
て言いんしゃった」て言うて、
すぐ帰ってみらしたぎぃ、和尚さんの、
「どがん家の建ちおったなぁ」て言いんさったぎぃ、
餅は火鉢の中に埋めて、
しとんさっもんじゃいけんですねぇ、
「柱のこけぇ建てて、こけぇ建てて」
て言いんさって、すっぴゃぁ餅ば、
ちょこんちょこんつん抜かしたちゅうもんなたぁ。
そうして、小僧さん食べてしもうた
ちゅうもんなたぁ。
そいばぁっかい(それでおしまい)
(出典 佐賀県文化財調査報告書 第71集「~矢筈・神六の民俗~」p125)