野狐の難産

野狐の難産 彩色:宮地武志

 武雄市西川登矢筈 本山イセさん(明37生)

 むかし、野狐【やこ】が、産がきつくて、

人間に化けて一人で産婆さんを迎えにきたて。

そうして、

産婆さんな、ずーっと山奥に連れて行かれて、

大きなお屋敷で無事お産をすませたので、

綺麗な所に寝かせてもらいなったて。

そうしたら、明くる朝起きてみたら、

野原の中に寝取ったそうです。

それでも、お礼に貰って枕元に置いていたお金は、

本物のお金だったて。

それは、近くで開かれていた講のお金じゃったて。

講のお金がなくなっていたて。

それで、

「産婆さん使きゃぁは(産婆さんを迎えに行く時は)

一人で行くもんじゃなかぁ」て、昔は言いよったよ。

(出典 佐賀県文化財調査報告書 第71集「~矢筈・神六の民俗~」p118)

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