武雄市西川登矢筈 石橋ワサさん(明36生)

 むかぁし、孝行息子が、お爺さんば、

う捨【う】してに入ったばってん、

また、連れてきて、

床ん下に置【え】ぇとったてなたぁ。

そいが知るっぎぃ、

殿【とん】さんがやかましかもんじゃい。

そいぎぃ、殿さんが、難問ば出しんさったてなたぁ。

「木の枝の、

どっちが元か末が分からんごとしたとば、

どっちが元か末か分かった者【もん】な、

褒美をくるっ」ち言いんさったてぇ。

そいぎ、その孝行息子が、隠しとっお爺さんに、

「お爺さん、ぎゃん言うて、殿さんが、

問題が出しござったてぇ。

どがんすっぎぃよかろうか」て言うて聞かしたぎぃ、

「そいば水に浸けてみろ。そいぎぃ、

元は沈うで末は浮かぶ」て言いんさったて。

そいぎんと、そがんしたぎ、褒美を得たでしょう。

そいから、また、灰縄のなたぁ、

「灰の縄ばのうたとば、

曲がった縄になっとっとば持ってこい」て

そいぎ、また、

「どがんすっぎよかろうか、また問題が出たけん」

ち言うて、尋【たん】ねんさったぎ、

「その枝をどっぷい潮水につけとっぎ良かなたぁ。

そうして焼け。

そいぎぃ、いっちょん崩れんで灰の縄のでくっ」

て言いなったて。

そいぎぃ、そがんして、また、褒美ば貰いなったて。

(出典 佐賀県文化財調査報告書 第71集「~矢筈・神六の民俗~」p122)

標準語版 TOPへ