武雄市西川登矢筈 石橋ワサさん(M36生)

 むかし、あるところに

一番嬶さんの娘と

二番嬶さん【継母】の娘(継子)がおったてぇ。

そうぎぃ、二番嬶(がが)さんな、

一番嬶(がか)さんの娘ば

とてもいじめておいなったて。

そいで、何処とかの殿様が来て、

「歌詠みばさせろ」て。

そうして、皿に笹ば立てて、そうして、

「歌詠みばさせろ。褒美ばくるっけん」て、

殿さんが言いんさったてなたぁ。

そいぎぃ、二番嬶さんが欲で、我が子に、

「歌詠みばせろ」てさせんさったぎぃ、その娘は、

「皿に塩入れて、笹立てて」

て言うたちゅうもんなたぁ。

そいぎ、一番目の嬶さんのが、

「皿々と、皿竹山に雪降りて、

雪の根元に育つものかな」

て詠みんさったて。

そいぎんと、殿さんが、

「その娘ばくれ」て言いござんもんじゃっけん、

今度ぁ、二番嬶さんが、箒ば投げんさったて。

そいば、好かじぃなたぁ。

そいぎぃ、

「嬶様よ、嬶様よ、腹立ちまぎれに投げ箒、

伯耆の国をとるぞ嬉しき」

て詠いんさったて。

そいばぁっきゃ【それでおしまい】

(出典 佐賀県文化財調査報告書 第71集「~矢筈・神六の民俗~」p115)

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