武雄市西川登矢筈 松尾ハルさん(大5生)

 むかあし、村の長者さんが、田んぼに行たて、

「雨ば降らせてくれて、

水ばこけぇ入れてくるっぎぃ、

我が娘ば3人じゃいもっとっとばくるっ」

ちゅうて、言いおったぎぃ、

蛇が入れてやって、そして、

「くいろ」ちゅうて来たて。

そいぎぃ、一番口の姉ちゃんに言うたぎぃ、

「我が、ならん」て言うたちゅう。

そいぎぃ、こんだぁ【今度は】、二番目も、

「ならん」て言うたちゅう。

そいぎぃ、三番がなたぁ、

「アノ、『なる』言うけん、

人間になってきてくいろ」て言われて、

そいで、人間になってきたてったん。

そいぎにゃぁ、

「お嫁さんに行くけん、瓶ばくいろ」

て言うてぇ。

そうして、瓶ば婿さんに背負わせて、行きおって。

そん時は、子供ばもう持っとろうごたったなたぁ

そうして、途中で、瓶の中(なきゃ)ぁ

水の入(ひゃぁ)っぎぃ、

瓶の沈むもんじゃい、蛇の死んだてぇ。

そいぎにゃぁ、我が一人(ひとい)になって、

「この子ばおおす【育てる】」ち言うて、

よそん家でお世話になってなたぁ、

そいぎぃ、

「こん子は、ただ者(もん)じゃなかごたっ」

て言うて、

その子ば守【子守り】すっ時、

歌(うちゃ)ぁおったろうてろう。

その娘は、塩田の娘ち言いおったかにゃぁ。

そいぎぃ、その後、お爺さんば訪ねてなたぁ、

その娘が子供ば連れて行きんさったぁ。

そいぎぃ、達者して、

そのお爺さんのところさい、行かれたち、

そがん話して聞かせおんさったぁ。

そいばっかい【それでおしまい】

(出典 佐賀県文化財調査報告書 第71集「~矢筈・神六の民俗~」p110)

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