多久市北多久町小侍 小野三次さん（年齢不詳）
むかし。
ある人が山道を通っていたら、
蛇（くちなわ）が蛙（ビッキー）を口にくわえて、
キィーキィーと鳴かせて苦しめていました。
ある人は蛇（くちなわ）に、
「お前、助けとけぇ。俺の一人娘が、嫁にくるけん」と言われました。
すると、蛇（くちなわ）は、それを承知して、蛙（ビッキー）を離してやりました。
蛙（ビッキー）は、ある人にお礼を言うかのように、キィーキィーと鳴きながら、
どこかへ行ってしまいました。
そんなことがあってから、何十年か過ぎ去ったある晩に、
立派な男が、ある人の家を訪ねて来て、「ごめんなさい」と言った。
ある人は、「何事か？」と見知らぬ立派な男に聞きました。
すると、立派な男は、
「私は、あなたと約束しとった」と答えましたが、
ある人は、心当たりを思い出すことが出来なくて、
「何ばかいのう【何をでしょう】」と、立派な男に聞き返しました。
立派な男は、
「私は、山でビッキーをくわえとったら、
『お前、助けとけぇ。俺の一人娘ば、嫁にくるっけん』て、あんた言うたけんが」
と、答えたのです。
ある人は、そのことを思い出して、びっくりしてしました。
それで、ある人は立派な男を娘に見せてみました。
娘は立派な男を気に入ったので、結婚することになりました。
ある晩のこと、嫁は立派な男が寝ているところをのぞいて見て、
腰が抜けそうなほど驚きました。
それは、蛇（くちなわ）が横になって寝ていたからでした。
蛇（くちなわ）は気づくと、すぐに人間の姿に戻りました。
そんなことがあって、嫁はご飯も食べれず、やせ衰えてゆくばかりでした。
それで嫁は、医者にかかって薬を飲んでも治りませんでした。
ちょうど、そこへ占師が訪ねて来て、
「俺が、嫁の病気を治しぎゃ来た。こりゃあとても、薬じゃ治らん。
鷲の卵を呑ますんないば、こりゃあ、すぐ治っ」と、ある人に言ったそうです。
その話を聞いた聟（むこ）は、
裏山に鷲が巣を作っていたことを知っていたので、その卵を取りに行きました。
そして、占師とある人も裏山へ行きました。
聟は、鷲の巣をかけている木に登り始めると、占師はある人に、
「あぁ、ちょっと見てくんさい」と言いながら、指を差しました。
その時、もう聟は蛇（くちなわ）の正体になっていました。
それで、鷲は蛇（くちなわ）に
卵を取られてはいけないと思って、突（つつ）き始めました。
占師は、
「こなたの聟（むこ）さんは、蛇（くちなわ）たい」と、
ある人に言いました。
そして、鷲は蛇（くちなわ）を突（つつ）き殺した。
その途端に、ある人の娘の病気は不思議にも治りました。
ある人に助けられた蛙（ビッキー）が、
占師になって恩返しに来たと言う話です。
（出典 佐賀の民話第二集 P161）
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