多久市北多久町中ノ原 飯盛康晴さん(明43生)

 あつこの富士駅から、身延線てあんもんなた。

あの、身延山に行くローカル線がなた、

身延線ちゅうて。

その身延線の途中になた、その、

弘法大師のお寺があるわけたんたあ。

なぜかと言えばですよ、

日蓮宗とそいと弘法大師さんな、

ほんに仲の悪かったてっちゃん【悪かったそうな】。

そうしてその、弘法大師がやっぱい

日蓮さんよい秀才じゃったらしい。

偉かったて。

そいで、

その問答しても日蓮宗さんが負けたてっじゃん。

そいぎ負けて、そうしてその、

弘法大師がその、勝ったもんだから。

そいもんじゃい【それだから】、日蓮宗の門徒が、

弟子がなたあ、毒饅頭ば食わせて、

そうしてその、弘法大師ば殺そうで思うて、

そうしてその、毒饅頭ば持って来たて。

そうして持って来て、

食おうでしよったぎにゃあと

【食べようとしていたら】、

犬(いん)が来て、そいでその、毒饅頭ば、

いち食うたてっちゃん【毒饅頭を食うたそうよ】。

そいぎぃ、いち食うて。

そうしてしよったぎにゃあ、そこで、目の前で

ちゃんぎり舞(み)ゃあして【ぐるぐる舞って】、

そいで、ちい死んだてじゃん

【それで死んでしまったそうだ】。

「ああ、こりゃあ毒饅頭じゃった」

と、言うことで、

「俺(おい)が代わりに、

この犬が死んだから。そいけんが」て、

言うことで、銀杏(ぎなん)の木をですね、

杖に持っとるその銀杏の木をそこに埋(い)けて、

そうして銀杏の棒を印として立てて、

その犬を祀(まつ)ってやったと。

ところが、その銀杏の杖が、だんだん根がついて。

そうして栄えて、そうして実がなって、

そうしてその実が、ちょうど犬の牙のように、

細長(なご)うしとんもんだから【しているから】、

その犬が亡くなって、そうしてその、

大きなのを起こしたと、言うことで。

そいぎぃ、その銀杏が非常に栄養が高(たっ)かと。

薬なっと言うことで、

今なお多分、その銀杏をですね、

粉末にして、あの、しとるらしい。

まあ、そういう由来(ゆわれ)。

[自然説明伝説・木]
(出典 多久・飯盛翁が語る佐賀の民話 P113)

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