多久市北多久町中ノ原 飯盛康晴さん(明43生)

 お林さんと言うのは、

あの、多久さんの娘じゃん。

そうして、相手方が相の浦さんて言う。

その、相の浦の領主。

元は、まあ、あつこは城があったですもんね。

えぇ、あの、豪族がおったわけですね。

そいで、あそこには右近の城(じょう)。

左近の城ちゅうて、元は城がありました、

あすこは、昔は。

まだ山も残っていますが。

えぇ、あれが左近の城か。

左近の城がですねぇ、今のインターチェンジで、

ちょっとカットしてますね、半分ぐらいは。

まあ、そこで豪族がおりまして、

そうして、その子孫の相の浦さんが、ああ、その、

多久藩に支配されるようになって。

そうして、、それから、まあその、

家来としておってしとったところが、

その、お林さんとその相の浦の領主と、

その、恋愛したわけですよね。

そいぎぃ、恋愛したもんだから、

そして妊娠なったわけ。

そいぎやっぱい、その殿さん城下として、

「不義をした」と、言うことで、

打ち首にせんばらんことなってきたわけ。

その時、えぇ、多久の殿さんが、参勤交代で

江戸に行かれる時に、家来に申し付けたわけ。

「もう不義をしたけん、そいけん、

お林をとにかくその、打ち首にせろ」と言うて、

打ち首に命じて行く時に、

その刀の柄(つか)のところに

朝鮮人参を結(くび)い付けて、

殿さんがやったらしい。

そうしたところが、家来が朝鮮人参を、

なし【なぜ】、こけぇ

結い付けちゃろうかと、思いながらも、

その、今の宮浦に、あっこに連れて行って、

そうして、えぇ、その打ち首にしたわけですかね。

そうして、今度(こんだ)あ帰って来て

心配であったもんだから、

「お林はどうしとっかあ」て。

「もう、がんしてその、殿様の仰せどおり、

ぎゃんして宮浦の所(とこ)で、

えぇ、もう打ち首しました」と言うたぎぃ、

殿さんも非常に嘆かれたらしい。

そこでその、あれはまあ、殺せ。

殺すなと言う意味で朝鮮人参は、

もう人を助ける薬(くすい)だから、

だから殺して、この刀で殺さんまらんけれども、

朝鮮人参と言うのは、まあ、病気を治す、

命を助けると言う意味で結い付けとったとが、

その、今の家来が悟りきらんで、本当にまあ、

打ち首にしたわけですがね。

そこで、えぇ、今度、家来たちが責任を負うて、

もう全部、切腹したわけたんたあねぇ。

そして、大明神に祀(まつ)ったのは、

お腹におる子供を殺したから、

だから安産が出来るように、

子供の幸せをやっぱい祈ってやったもんな。

その安産の神様として祀ったわけ。

そいで、今の、その、お林さんと平林二郎さん

と言うのが、そのお林さんの恋人なんですがね。

[文化叙事伝説・英雄]
(出典 多久・飯盛翁が語る佐賀の民話 P107)

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