多久市北多久町中ノ原 飯盛康晴さん(明43生)
むかしですねぇ。
道中の所に団子（だご）屋さんがあったらしい。
それで、その団子がほんに流行って、
売れていたから、今度、他の人が、
「俺（おい）も、いっちょ（ヒトツ）
団子屋しよう」と言うことで、
そこの近所で団子屋を始めたらしい。
そうしたら何もかも、最初のお客さんがなくて、
こりゃ困ったねと思っていたところ、
大石蔵之助が来ました。
そうして、
「実は、こうこうこう言うわけで、
隣団子屋ができて、家（うち）ゃあもう、
不況になって、もう隣（とない）が繁盛しおっと。
だからもう、ちょっと困っとります」
「ああ、そうかあ。そしたら、俺がその、
絵を描いてやろう」
と言うことになり、今の川を描きました。
それは、川に魚が泳いでいるところと
カワコウセミが狙っているところを描いたらしい。
そうして、
絵には大石蔵之助と名前を書いたそうです。
そうしたら、
赤穂浪士の大石家老の絵と言うことで、
「そりゃ【それは】珍しか」
と言うことで、それを見に来て、
今度は、その団子買いに
お客さんが集まるようになりました。
ところが、その内容はですね、
その当時の内容は、
何もその意味を表現してなかったけれども、
後々の人の、まあ学者たちの解釈では、
必ずその、いっぺん狙ったら、
もう間違いなく取ると強い。
取りそこなわないと。
もう一度もないらしい。
だから吉良上野介の首を必ず討ち取るという
気持ちの人の表現じゃないか、
と言うようなことで。
［文化叙事伝説・英雄］
(出典 多久・飯盛翁が語る佐賀の民話 P103)
