多久市北多久町中ノ原 飯盛康晴さん(明43生)

 醤油(しょうい)は混ぜんば、

いかんわけですよねぇ。

もう混ぜんと黴(かび)のするから、

しょっちゅう暇さえあれば、いいわけですよね。

そいでその、姑さんが嫁に、とにかくその、

もういっちょでん嫁御がその、

「ないせろ」て、

言うばってんが【言うけれども】、

言うこと聞かんわけよ。

そいもんだからその、

「もう、何(なん)じゃいせろ」ち言(ゅ)ぎぃ、

もう反対のことばっかいその、

若嫁がすんもんだから、

「あつけぇ【あそこに】俺(おい)が、

あの、醤油ば仕込んどっけんが、

混ぜんごとせんばいかんばい

【混ぜないようにしなければならないよ】。

混ずっぎ、どがんしゅうなっけん、

醤油ならんばい」て、

こう言うて、嫁くさんに言うたらしいもん。

そいぎにゃあと【そうしたら】、

そいない【それなら】俺がもう、

ごっといきゃあ混ぜてくるっくしゃあ

【いつも混ぜてやるぞ】て。

そうしててんぐうて【いたずらして】、

その、こう、嫁くさんがさい、

姑からいじめらるもんだから、

もう暇しゃあっぎ【暇さえあれば】行たて、

もう混ぜおったらしいもんのまい。

そうしてその、すっぎにゃあ立派(じっぱ)な

醤油ができおったてたんて、

言うことを、やっぱい聞かせてもろうとったあ。

[世間話]
(出典 多久・飯盛翁が語る佐賀の民話 P92)

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