多久市北多久町中ノ原 飯盛康晴さん(明43生)

 よう狐は後見(うしろみ)しよったのまい。

必ず狐がもう、

真っ直ぐ行かず必ず止まって後見しおった。

そりゃ【それは】、

なしかーあて言うぎにゃあと【なぜかというと】、

尻(しぃ)ば、

はぐって化けの皮現わすと言うことで、

狐がなたあ、人間と合うぎにゃあ、

俺(おい)が化けた時、

その、着物(きもん)ば、はぐって尻尾ば、

その、断じて化けの皮は、あいが、はぐるけん。

そいけんが、その、

尻尾を大事にすっため見せんために、

後見して、人間の後ろから,

来わしおんみゃあかにゃあ

【来てはいないだろうか】、と思うて、

ありゃ【あれは】見よっところたん、

て言うことは、婆さんから聞いたことあっ。

そいけんが、必ず野狐(ヤコ)と出合うぎにゃ、

後見すって。

その後見すったその、化けた時に人間が。

その、尻尾ば、

まあその、隠しとっとばその、出すて。

そいぎ化けそこなうけんが、

そいけん化けそこなわんごと計画して、

あの、まあそん時分な、

「あやわしかけん【あやういから】」

ち、言いよったのまい。

計画が、あやわしかけんが、そいけんその、

後見して人間の来やしおらんかにゃあと

【来てはいないかと】、

ありゃ見おっところじゃあて。

そいまあっきゃで【それでおしまい】。

[世間話]
(出典 多久・飯盛翁が語る佐賀の民話 P89)

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