多久市北多久町中ノ原 飯盛康晴さん(明43生)

 葬式の時、茶碗に飯ば

いっぴゃあ【たくさん】山盛り積んで、

そうしてあの、生竹で箸(はし)を作って、

そうして挿したその由来(ゆわれ)は、

私ゃ母から聞いとったですがね。

それはですね、その、もう亡くなって、

そうして天国に行くには、相当遠かて。

天国に行こうでちゃ遠して。

そうしてその、

天国の極楽浄土に行こうでちゃ【行くには】、

なかなか何日でんかかっけん【でもかかるから】、

そいけんがその、

ひもっしゃしやって【空腹がって】、仏さんの。

そいけんが、茶碗に、

ご飯ば、いっぴゃあ【たくさん】山盛りついで、

そうして上げて。

そいばその、食うて。

そうして、極楽浄土に行たてったんて。

そうして、三途の川を

渡ってしやってったんと【やるそうだと】。

そいで手掴(てつか)み

しちゃいかんけん【してはいけないから】、

て言うことで、その、竹の、生竹ば切って、

生竹で箸をを立てて、

そいで食(き)いやっごと【食べられるように】、

あの、立ててあってったん。

そいけんが、あの、生竹で箸作んもんじゃなかて、

言うとは葬式の時つかうとっけんが、

縁起嫌いで生竹で普通箸をつこうてはいかんて。

ご飯のですね、早(はよ)う

のうなっぎにゃあと【早くなくなると】、

その仏さんなもう、

成仏しといやってったんと【成仏されていると】。

もうご飯は食べてしもうて、そうしてもう、

極楽浄土に行たといやったと。

だから、その今の早うのうなっぎぃ、

早う極楽浄土に行てやったけん【行かれたから】、

ご飯な早うのうなった方が良かてったん、て言うて。

烏が鳴くと死人の出くっと。

て言うのは、やっぱい烏が、そいば食おうで思うて。

[俗信譚]
(出典 多久・飯盛翁が語る佐賀の民話 P83)

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