多久市北多久町中ノ原 飯盛康晴さん(明43生)

 烏(からす)の鳴くぎぃ、

なし【なぜ】、死人の出くっかあちゅうぎぃ

【死人が出るかというと】、

烏は頭の良かったてぇ。

ほんに頭の良かったてったん。

そいぎその、もう、あいが【あれが】鳴く時ゃあ、

もう病人どんがあっぎにゃあと、

「もう、ありゃあひょっとすっぎぃ、

明日(あし)ちゃあどま

死にゃすんみゃあかにゃーあ

【死ぬのではないだろうかねぇ)」

て言う、勘が強かったて。

そいでその、今の葬式のあっ時ゃあ、

昔は必ずご飯と団子(だご)ば、

あの、上げよったと。

そうして上げてすっとば、

そいば【それを】烏が食(き)いよったらしか。

そいもんじゃいその、

今の当時は、やっぱい団子とか、

ご飯ば上げとっとば、やっぱい

ご馳走(ごっとう)だったと見ゆっでしょう。

そいでその、食うために、

その、葬式の時は烏が鳴く、

て言う風な話ば、よう聞いとったですよ。

[俗信譚]
(出典 多久・飯盛翁が語る佐賀の民話 P82)

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