多久市北多久町中ノ原 飯盛康晴さん(明43生)
雷さんの鳴っ時ゃ、
早(はよ)う蚊帳(かや)引けち。
そうしてその、すぐ臍(へそ)を押さえろて。
そいぎのまい、その由来(ゆわれ)はですね、
その蚊帳て言うとは、昔ゃ、
あの、麻で作ってあってじゃんのまい。
そいぎ麻は、電気の通じらんて。
そいけん、早う蚊帳引けちゅうことは、
麻ばしとっぎ電気のこんけんが。
そいと今度(こんだ)あ、
臍ば押さえろて、言われよったあ。
臍押さゆっちゅうことは、
やっぱい人間では、一番大事なとこ。
やっぱい、その、母親から、その、
養分を臍を通じて
五体満足でなってきっとじゃっけん。
だから人間では、
臍が一番大事な場所じゃっけん、
そいけん雷さんが落ちて、そうして、
あの爪で臍ばくじっていち食うて。
そいけんが、
そがん大事にせんばらんけん
【大事にしなければならないから]、
早う手で押さえてせんばいかんじゃあ
【押さえてしなければいけないよ]、
て言う話を、私は聞いとったですがね。
[俗信譚]
(出典 多久・飯盛翁が語る佐賀の民話 P77)