多久市北多久町中ノ原 飯盛康晴さん(明43生)

 あの、ちょうど徳川家康公が、

ありゃ何と言う、お寺ですかね。

門にね、鷹の絵の彫刻をはめるから、

注文をしたわけですよ。

そうしたら、

大久保彦左門は左甚五郎に彫らせたわけです。

それから、もうひとりの人は、

【あれは何て言うたかなあ】

別に鷹の彫刻をさせたと言います。

その時に、

もうひとつの鷹を作った人と左甚五郎の

作った幕が、こうしてあります。

幕は、ちょうどほら、除幕式に、

あの前に幕を描いてね。

そうして、絵が富士山と茄子(なすび)、

それから鷹の絵を描いたんです。

そいぎぃ、それまでは、

まだ、よくわからずにいました。

ところが、

大久保彦左衛門は富士の山は天下一を示し、

そして茄子の絵を描いたのは、、

「茄子の花には千に一つのあだがない」と、

必ず実るからと。

それから鷹と言うのはですね、

信州あたりの、あの寒い中に一晩過ごすには、

足がもう凍るように冷たい。

だから必ず、冬は小鳥を捕まえるらしい。

それで、ほとんど捕まえて、そして夜な夜な、

代わる代わるに足を温めて、

冬の夜を過ごしていたらしい。

そうして、夜が明ける頃、小鳥を逃してやりました。

それで、その小鳥が例えば南の方に飛んで行くと、

自分は北へ行くと。

西に行くと、東へ飛んで行くと。

その小鳥を、もう二度と捕らないと。

助けてくれたと言います。

そういう恩義の深い気持ちを持ったのが鷹だと、

言うことで恩義を忘れないというので、

鷹を描いてあるのです。

[俗信譚]
(出典 多久・飯盛翁が語る佐賀の民話 P75)

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