多久市北多久町中ノ原 飯盛康晴さん(明43生)
夏、蚊帳の中に寝とってっちゃん
【寝ていたそうな】。
そして寝とったぎぃ【寝とったら】、
今度(こんだ)あ、息子の子がさい、
「あの、父ちゃん何(ない)しよっねぇ」
て言うて。
何かセックスしおったもんだから、
「股(もも)引き履(は)きおったん
【履いているよ】」て言うて、
その親父さんが言うた。
「ああ、股引き履きおーっ」て言うて、
言うたてっじゃんもん【言うたらしいよ】。
そうして今度あ、朝なってしたぎにゃあと、
「ほら、父ちゃん、父ちゃん。
ちょっと来てみんさい【来てみなさい】」
て、言うたて。
「何(ない)こう【何だね】」て、言うたて。
そうしたぎぃ、
今度あ出てみたぎにゃ【出てみたら】、
何のその、鶏のその、被(かぶ)せおったて。
「股引き履きよっ。鶏の股引き履きよっ」て、
言うたちゅう話。
「そりゃ股引きじゃあんもんかーあ。
被せおっとこたーあ【被せているところよ】」
「ああ、鶏が被すっとけやーあ」て言うて。
[大話]
(出典 多久・飯盛翁が語る佐賀の民話 P71)