多久市北多久町中ノ原 飯盛康晴さん(明43生)

 むかしその。

肥後にその、持ち物の太かとのおったらしい。

女のひとが。

そいぎ今度(こんだ)あ、肥前にはまた、

こう持ち物が、もう太かとのおったて。

そいぎその、何処(どこ)捜しても

自分のとの合うとのなかったて。

そいぎぃ、

話のようば聞いてみっぎにゃあと【みたら】、

肥後に大抵(たいてい)太か、

その持ち物もった女(おなご)の

おってっじゃっけん【いるということだから】。

そいないば【それならば】、

あの、ひょっとすっぎ俺(おい)がて

合やあすんみゃあかにゃあ【合うかもしれない】、

て思うて、

行きよったてじゃんもん【出かけていたと言う】。

そいぎ今度あ、肥後の女の人は、

「とにかくその、肥前には大抵持ち物の

太かとのおいやっちゅう【いるという】話と。

そいぎぃ、その人んとないば【その人のであれば】、

ひょっとすっぎ【もしかすると】

私んちゃあ合やあすんみゃあかあ」て、

言うことでさい。

そいで、しよったぎちょーうど、

峠で出っかしたてっじゃん【出会ったと】。

そいぎ峠で出っかしたぎぃ、

「何処さい行たかにゃあ【何処へ行ったかね】」

「実は、こうこう」

「あらー。

そんない私もそがんじゃった【そんなだった】」と。

「そいぎぃ、

あいばちょっと、こけぇ峠で一休みすっかあ」と、

言うてその、

そこで一服しよったぎにゃあと【していたら】、

あの、何が、肥前のその男が、

「えぇ、まあ、いっちょやっ前【ひとつする前】、

兎狩いどんして行くかーあ【でもしていくか】」て、

こう言うて、言うたらしいもん。

そいぎその、

「兎狩り。そんない良かろう」

「そいぎ俺がちんぽで、その、

ずうーっと追い回して来っ」て。

「ボタボタ叩(たち)ゃあて。

そいけん、わさんな【あなたは】その、

谷の所(とけ)ぇはたがって、えぇ、おれ」て。

「そいぎ兎の

そこさい入(ひ)ゃあって来っとば、その、取れ」

と、言うことで。

そうして、しよったぎにゃあ【していたら】、

もう一匹、二匹て入ゃあって、

三十七匹も入ゃあったて。

そうして、

「もう、良かろう」て言うて。

そうして今度あ、

「いっちょ気張って出さいぼう【出しなさいよ】。

そいぎ俺が、

持ち物で一匹一匹(いっちょいっちょ)

出て来(く)っとこば【出てくるところを】、

俺が叩き殺すけん」て、

言うて構えておったぎぃ【いたら】、

出(ず)っこと出っこと。

そうして二十六匹出たてっちゃん【出たそうな】。

そいぎと、

「もう、大方、

もう入っとらんごたーあ【入っていないようだ】」

て言うて、

そうして、しよったぎにゃあ【していたら】、

あの女の人、

「まあーだ、どがんじゃい【どんなにか】

奥の所(とけ)ぇ、モヤーモヤーしおっごたーあ

【しているようだ】」て言うて、

言うたてっじゃんもん【言ったらしい】。

「奥の所ぇ、モヤーモヤーしよっ。

それぇ、そりゃあ、また、まーあ一匹、

それ入ゃあとっかにゃーあ【入っているかな】」

て言うて。

そうして、しよったぎにゃあ【していたら】、

「うん。

やっぱい入ゃあとっ【入っている】、入ゃあとっ」

て言うて、

その出たてっちゃんもん【出たらしいね】。

そいぎ肥前の男、そいば叩き殺そうだあと思うて、

してみたぎ【してみたら】何の婆(ばば)さんの、

あの、焚物(たきもん)背負う(かる)うて、

ビャアーラ背負うて入ゃあといやったて

【入っていたと】、言う話たんたあ【言う話さ】。

 [大話]
(出典 多久・飯盛翁が語る佐賀の民話 P66)

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