多久市北多久町中ノ原 飯盛康晴さん(明43生)

 むかし。

ある店に女中と下男がおったわけよ。

そこに、その、今の下男が、

その女中さんに飴がたば入れとったて。

そいで飴がたば

入れとったぎにゃあと【入れていたら】、

何(ない)もかいも

夏の暑(ぬっ)か時じゃいもんじゃい

【暑い時であったから】、

あい(飴ガタ)が溶けて、もう何も、

しんじゃこんじゃならんやったてじゃんもん

【困りはててしまった】。

目の覚めてみたぎぃ。

そいぎぃ、こん畜生(つきしょう)、あいが、

がんことしはたげた【こんなことをしてしまった】、

と思うてさい。

そいぎぃ、

黙っとったてじゃんもん【黙っていたらしい】。

そして黙ってしとったぎにゃあと、

今度(こんだ)あまた、

その明くる晩な、

長茄子(ながなすび)ば

また突っ込(く)うどったて。

そいぎやっとんにゃあ、と思うて見たぎぃ、

もう長茄子のもう、

その、焼けてもう、色が変わいしとったちゅう。

そいぎさい【そうしたらね】、

畜生がまたがんことしはたげた

【こんなことをしてしまった】、

と思うてさい。そいぎぃ、

そいば味噌搗きして、そうしてその男に、

その、下男にのまい(ネ)、

その、食わせたてじゃんもん【食わせてね】。

そいぎにゃあと【そうしたら】、

その下男が、その女中にさい、

「今朝の茄子漬けは、

ありゃうまかったじゃあ

【あれはうまかったよ】」ち。

「そうじゃろう【そうだろう】。

ありゃあ【あれは】、

お前(まい)の一晩中、俺差し込(く)うだとは、

あの長茄子たい」ち。

[大話]
(出典 多久・飯盛翁が語る佐賀の民話 P65)

標準語版 TOPへ