多久市北多久町中ノ原 飯盛康晴さん(明43生)
まあ、お寺とか家の古い所。
そうしてその、しーんとした時分に、
「チャポン、チャポン」というのは、
こりゃもう、何となく怖いような恐ろしいような、
何だかこう、
化け物でも幽霊でも出てきそうな感じがするわけ。
それはなぜかと言えば、余り静けさの中に、
一溜まりの雨の溜りでも、「チャポン」ていう、
あの声が何となくやっぱいもう、
そのままに聞こえるわけよのう。
ところが、風が吹いたり、
いろいろ他に雑音がしおっぎぃ【していると】、
そういう感じは起こってこないわけ。
ただ静けさの中じゃっぎにゃあと【中であると】、
「チャポン」という音も、そいから、
障子が破れてそーっと吹いてくる。
そいでピンピンピンと、こう、
微風(そよかぜ)のためにする、
そういう音が
何とも言えない寂しいような感じがするというのも、
その、無音風も、
静けさの中にあっぎにゃあと【あると】、
あらゆる音でもそういうような怖いような
恐ろしいような感じを受けた。
[大成 六四二B 果てなし話・第二類・池の端の木の実]