多久市北多久町中ノ原 飯盛康晴さん(明43生)
その、宿屋の人が、
「お客さんがね、どうもあの人は
大抵お金持ちじゃったろうごたっ、
金持っとばい」と言っていました。
「財布の中、銭ばどっさい入れとっごたっ
【たくさん入れているようだ】。」
だから、今日はとにかく、
茗荷(みょうが)をしよう、
たくさん食べさせろ」と。
「そして、茗荷食わすっぎにゃあ、
その、物忘れすっ」
と言うことですから、
「その、どっさい食わせて。
そうして、きんちゃく【財布】ば
いっちぇてはしっごと
【置き忘れて行くように】食わせろ」
と言うことでした。
そうして、
茗荷をたくさん食べさせたわけです。
すると、食べさせたところ、
きんちゃくを忘れるんじゃなく、
宿銭を払うのを忘れて
走って行ったそうです。
[大成 三九二 茗荷女房]
(出典 多久・飯盛翁が語る佐賀の民話 P38)