山ン姥

あの、山ン姥と言うのは人の子ばかり捕（と）っていました。

それだから、今度は村の人が、山ン姥の子供を隠したわけです。

それで、山ン姥は自分も人の子を捕っていたけれども、

自分の子を捕られてみると、やはり、心配になりました。

そうして村の人が、

「とにかく、誰しも同（おな）しこっじゃろうが【同じことだろうが】」と。

「お前、人の子ばっかい捕って食うばってん【食うけれども】、

自分の子が捕られてみっぎにゃあと【捕られてみると】、

たった一人の子供でも、お前（まい）、心配すっ」と。

「しかし、今までお前はとにかく、もうたくさんの子供を

捕って食うとじゃかあ【食べているからなあ】」と言われました。

「そいけんが、お前がね、もう人の子を捕らんごとなれば子供を返す」

と言ったら、その山ン姥は、

「そいじゃ【それでは】今から捕りませんから、子供を返してくれ」

と言って、それから人の子は捕らないようになったというわけです。

そいまっきゃ【それで終わり】。

(出典　多久・飯盛翁が語る佐賀の民話 P21)