多久市北多久町中ノ原 飯盛康晴さん(明43生)
まあ、ある村に、お爺さんとお婆さんが住んでおりまして。
そうしてその、猫が住みつき犬が住みついて。
ところが、一つの家族として可愛がっておったわけですよねぇ。
そして可愛がられておった時に、
「えぇ、その、向こうの島に、その、宝があると。
だから、その宝を取ってきてくるんもんのおらんだろうかあ」
と、言うたぎその、今まで猫と犬が可愛がられておんもんだから、
「じゃあ、恩返しに」て、言うことで。
そいぎその、猫はそう泳ぎきらんもんだから、犬は泳ぐけん、まい
「そいじゃお前、猫、お前は背中に、俺が上乗れ」
と、言うことで乗って。
そうして、泳いで向こうに渡って宝を持って来たちゅうわけ。
そいで、持って来っ時は、犬は一生懸命泳がなんもんだから。
そいぎその、背中に乗っている猫が、その宝を持って来たわけ。
そいで持って来て、そうしてその、お爺さんお婆さんに捧げたわけ。
そいで猫がつら面作ったわけ。
いわばとにかくまあ、自分がまあ、持って来たと、
いうけれども実際は犬せなきが泳いで背中ゃあ乗せて行たから、
宝は手に入っとるわけなあ。
ところが、その猫が面作ってそうしたもんだから、
猫ばっかいその、お爺さんとお婆さんが、可愛がったわけよ。
そいもんだから、
「そもそも猫ばかい可愛がって、俺が泳いで背中に乗せて行って渡って来たればこそ、
宝ば取って来とうのに、猫ばっかい可愛がって、
ちくしょうこん畜生その、猫が面作ったということで。
今度(こんだ)そいから今度あ、犬が腹きゃあて猫を追い回すごとなったらしい。
そいまあっきゃ。
[大成 一六五 犬と猫の指輪]
(出典 多久・飯盛翁が語る佐賀の民話 P19)