多久市北多久町中ノ原 飯盛康晴さん(明43生)
やっぱり私の何(なん)ではですね。
蛙ー(ビッキー)がなぜ鳴くかと言うことは、
非常にその、蛙ーがなかなかその、
親の言うことをひとつも聞かないと。
だからその、
「山へ行けば、川へ行く。天気の良かぎにゃ、雨の降いよっ」
て、いうふうで、もう反対ばっかい、そのまあ、言いよったらしい。
ところが、その蛙ーが、ごっとい【いつも】もう、
反対ばっかい言うもんだから。
ところがたまたまその親が、親蛙ーが亡くなったもんだから。
まあ亡くなる前に、
「いっちょうもう、自分が亡くなったら、
後の亡骸(なきがら)をひとつ山に埋(い)けてくれ」
て言うぎぃ、こいが川岸に埋くっかもわからんと。
だから、「川」て、言うたこんな【言ったなら】 、
「山(やみ)ゃあ埋けてくるっじゃなかろうか」
と、その反対の裏を考えて、親蛙ーが、
「俺(おい)が死んだ時はない」て、
「そん時ゃ、あの、川岸に埋けてくんさいぼう【くださいよ】」
と、言うてしたぎぃ、今度(こんだ)その子蛙ーは、今までにゃあ、
親父(おやじ)どんが生きとっ時ゃ、
ほんに反対ばっかいしよったいどん【ばかりしていたから】、
まあ死んだもんじゃい【死んだものだから】、
もうたまたまあがんとじゃいけん、そのもう、最期じゃあもん、
当たい前、今度あもう、親の言うことば聞いて、
親孝行しゅうにゃあ【しよう】、という気持ちで、
「川岸に埋けろ」て、言うたもん。
川岸に埋けたと。
ところが、雨の降る時になってくっぎにゃ、
ありゃあ、しもうた。
ほんに親のその亡骸を川岸へ埋けたとが、
雨の降って大水のくっぎぃ、きゃあ流るっじゃあと、
いうその心配があって、その雨の降る時になっぎにゃあ、
雨蛙が、ギャッギャッギャッ鳴くと、
言うことを聞いとったわけですがねぇ。
[大成 四八 鳶不孝]
(出典 多久・飯盛翁が語る佐賀の民話 P5)
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