鈴をふり切った話(和尚と小僧の鈴)

鈴をふり切った話(和尚と小僧の鈴)

佐賀市末広一丁目 久保常造さん(明37生)

 あの、お寺の方にですね、世継ぎの子供がおらんと。

そいでその、女でですね。そいぎぃ、

「入聟取らにゃいかん」と。

 そうしたところが、小僧(こうずう)がですね、

いくらもおるもんだから、このうちから一つ、

その、選ばにゃできんと言う風でですね。

どれが良かろうかと、いろいろ迷ったと。

娘に意見を聞いても、

「誰でもいい」と言う風でですね。

 そいぎぃ、一番その、

精力の強い者を選ぶかととですね。

もう一つは、一番その、品行のいい奴を選ぶかと

言うことですね。

小僧ば本堂に集めたと。

そうして、その娘さんをですね、裸で連れて来たと。

 そうしたところが、もうその前に、

小僧の先の方に鈴を皆つけとったそうですね。

そうしたところが、裸で連れて来たもんだからですね、

その小僧がですね、もうようーして鈴を

「シャンシャン、シャンシャン」鳴らしたと。

 そうしたところが、一人の人(と)が、

いっちょん鳴いよらんと。

そいぎぃ、こうして見たところが、こりゃあまた、

ほんなこて、えらいまた、その、何と言うか、

おとなしかと言うか。

そいじゃなかったら精力がないと言うかですね、

妙な者がおるなあと思うて、

こうやって見てみたところが、

その鈴はふり切れてですね、

ついとらんじゃったと言うような話ですよ。

(出典 未発刊)

標準語版 TOPへ