佐賀市成章町 宮地ニワさん(明39生)

 お婆さんの家(うち)に拾われとっさい。

そしてそこで育てられよって、もう何年でん経っとっばってん、

もういっちょでん太らんもんなたあ、小(こーも)して。

そいばってん、知恵がほんにあってたんたあ。

もう誰(だれ)でん負けんじゃあちゅうごたっ知恵のあってなたあ、勇気のあって。

そいぎその、

「都さい行きたか。都さい行きたか」ち言(ゅ)うもんじゃい、昔のごと、

その、舟から行くちゅうてなた、舟ちゅうたっちゃお椀の舟てっちゃん。

そして、箸ばなた漕ぐて。針の、針ば刀にしてくさんたあ。

そしてお椀から漕いでズーッと都さい漕いで行きよたんたあ。

行きよっ途中で、その、まあ、ヤアヤアお姫さんば攫われて、一寸法師が上がって助くっところ。

そいぎゃんと、助けてあぎゃんと、

その、鬼の口の中(なき)ゃあ、その一寸法師が入っじゃろう。

そうして、わが、針ば持っとろうが。そいで、こうこう腹ん中ば突くさい。

そいぎもう、鬼ドンがもうどがんしゅうでんなかもんじゃい、もう苦しがって、

エヘッち言うぎぃ、一寸法師が飛び出してさい。

そいぎもう、鬼どんがもう、ドンドンドンンで逃げて行く時、

その打ち出の小槌ばいっちぇて行く。

そいぎその打ち出の小槌ば、拾うて。

そうしてからもう、そのお姫様を助けてけん、今度(こんだ)あ、お姫様の家来になって、

そしてもう、何(なん)でんお供して歩(さる)きよっ時、その打ち出の小槌で叩くぎぃ、

何(なん)じゃいほんに出てきたい何(なん)たいすんもんない。

いっぱいなったい、小(こも)うなれちゅうぎ小(こも)うなったいしたごとしてさいすんもんのう。

そいぎぃ、そのお姫さんの一寸法師ば、

「太うなれ、太うなれ」ち、三つじゃい叩きなったぎぃ、

もう、その一寸法師が立派な若者になって太うなっさい。

そいぎもう、その打ち出の小槌は、こいこそ大事に大事になやあとく。

そいぎその、悪か者(もん)からおっ盗(と)らるっさい。

そいぎもう、あぎゃんとおっ盗(と)らとってもう、幾ら捜したっちゃなか。

そうしたところが、ある日、悪者(わるもん)がもう、そいば利用して何じゃい悪かきもすっさい。

そして殿さんのその何(なん)でんが、米でん何(なん)でん取り上げたいなんたいしてから、

いっぺんにその、米と蔵と出そうで思うてさい、

「米蔵出ろーう。米蔵出ろーう」ち、三遍じゃい叩いとっぎその、米と蔵じゃなし、

その、小(こま)か盲人(めくら)のゾロゾロゾロて小(こま)か盲人の出てくって。

そうして頭の上から、体の上さい上いあがって出てくっ。

そいぎぃ、そいが気の違うてその、どがんじゃい狂い死にしたちゅうて行きなってばい。

(出典 未発刊)

標準語版 TOPへ