佐賀市成章町 宮地ニワさん(明39生)
石臼ばなわして、長者の、昔、長者のあがんとで、
長者、欲張りと、その兄さんと、優しかその弟嬢とおって、
そうして、米も出てくっし、塩も出てくっし、何でん出てくっ。
その人がほんに金持ちにないなったい。
兄弟おっばってん、兄さんな金持ちばってん、
弟はもう、人の良うして、もうあぎゃんとしなっけんが。
もう、ほんに貧乏しといなって。
そいぎんとは、貧乏しといなっけんが、そいばってん、米一升でんその、兄さんの貸さっさん。
借いぎゃ幾ら行たっちゃ。
そいぎぃ、わがも働いてあんぎあんぎしおっばってんが、
明日(あす)食う米でんなかごとあっぎぃ、兄さんに、
「貸してください」ち言(ゅ)うばってん、貸さっさん。
そいぎその、何じゃいでその臼ば回さすぎぃ、米も出てくっ、塩も出てくっ、
なにしても長者さんよいた金持ちならすじゃん。
弟嬢が。
そいぎその、兄(あん)じゃあしったん俺(おい)がどがんしてでん、
「あいが寝とっうち、石臼ば盗まんば」ち言(ゅ)うて、寝とっ時、石臼ば盗んで。
そうして、もう何処(どけ)ぇじゃい置くぎ目ぇひかっけんが、舟に乗って行く。
その、何処じゃい行かす。
そうして舟ん中で、こうこう回さすぎぃ、塩のどっさい出てくったい、
もう舟の転ぶごと、沈むたい。
止め道ば知らんと、出す道ゃ知っとっばってん。
止め道は知らじぃ、塩のドンドンドンドン出ていって、舟の沈むて。
そいけんが、海の水は塩の辛かて。
(出典 未発刊)