佐賀市成章町 宮地ニワさん(明39生)
むかし。
安珍ちゅうぎんと坊(ぼん)さんじゃろうが。
清姫は女(おなご)やろうが。
そいぎと、坊(ぼん)さんとは、そがん女(おなご)の交際すっごとなんじゃろうが。
そいば、ちょっと、その娘もまあよかとこの娘じゃいけんが、その、
そいぎんと、その、男と交際したいすっごとなんとこてっちゃん。
そいぎその、安珍とまあ、ヒョロッと会(お)うて、
恋仲んごとなってから、あぎゃんとすっじゃろう。
話したい何(なん)たいしよったろうだい。
そいぎんとは、そいがわかって安珍なもう、ちょっとえずうなったて。
そいけんが、そいと会われんごとなっ。
そうして安珍が、もう会いぎゃ来たって逃げて行くたい。
そうしてもう、何処(どけ)ぇ行たっちゃ清姫は追(う)うて来んもんじゃい。そいぎんと、
「お寺のその、あぎゃんと、釣鐘の下に隠れとんないばわかっんみゃあ」ち言(ゅ)うてから、
わが思うてから、清姫は鬼になった、蛇(じゃ)になった、鎌で切るような毛が生えた。
もうその海ば渡ってさい、あの、逃げて行たとんもんじゃい、
そこば、幾ら渡し守さんに渡してくいろ」ち言うて、
頼むばってんが、渡さんじゃろうが。
「渡してくるんな」ち言うて、行たとんもんじゃい。そいぎんと、
「そんない、渡さんない俺(おい)が泳いで行く」ち。
「泳いで行かれん。そいけん、早う帰ったがよか」ち言(ゅ)うばってん、
「もう、泳いで行く」ち言(ゅ)うて、そけぇ、海跳び込うだぎぃ、その鬼になった、
蛇になった、鎌で切るような毛が生えた、ち、歌のできとったい。
そして、泳いで行たて、その、安珍が隠れとっ釣鐘(ついがね)の七巻き半、舞うてっばん。
真っ黒こがれて死んどったて。
そいけん釣鐘には蛇(じゃ)のついとっ。
(出典 未発刊)