佐賀市成章町 宮地ニワさん(明39生)

 むかし。

鶴が罠(わな)にかかっとっさい。

そいぎんと、そこのお父(とっ)さんの助けて、よっと治療してようなんまで、

飛びゆんまで養うていきんさっ。

そいからもう、飛びゆっごとなったけんが、

「一人(ひとい)ここで寂しかろうけん」ち言(ゅ)うて、あぎゃんと。

逃がしなっ、助けなっ。

そいぎんとは、ある日、鶴が恩返しにさい、そこ、ほんに貧乏じゃった。

そいで、そけ、あの、来ったい、嫁くさんに。

そいぎそけぇ泊まってから、嫁くさんになったい。

そうしてから、あぎゃんと、何(なん)けんない。

そうして機ば織っ。そいぎぃ、

「自分がここさい出て来んまで、ここば見っことなん」ち言(ゅ)うて、

「絶対見っことなん」ち言うて。

そいぎんと機ば一所懸命織って。

そしてもう、立派い織ってあげて。

あぎゃんと、取い上げてから、その聟さんの売いや行かす。

途中で殿さんに会うてさい、そして、

「ほんに良かけんが」ち言うて、値段ば高(たこ)う買(き)ゃあなっ。

そいぎんともう、だんだんそういうふうで売れて、もう金持ちなっ。

そうしてからもう、後にゃそがんしよったぎんたあ、あんた、金持ちなっぎ

その亭主(てぇす)が飲んべぇのごといちなってさい、嫁くさんの言うことでん聞かんごとなっさい。

そうして一所懸命もう、織いよっぎんとは、どがんして織いよっじゃいきゃんと思うて、

見っごとなんちゅうとっとば、覗き見すっさい。

そいぎんとは、自分の毛ばひんにいで、一所懸命織いよろううがあ。

そいぎんとは、あの、あぎゃんして織いよっじゃいきゃんと思うて、

そん時ゃあ感心しとっばってん、もうほんに嫁くさんに良うせんさい。

そいぎんとは、あぎゃんと、そしてから鶴がもう、

わが体しっきゃあひんにいでそがんすっけん、死んか生きっかごとなっさい。

そして娘ひとり持っとろう。そいぎんともう、

「娘は頼む」ち言うてから、出て行くたい。

そいばっかいくさい【それでおしまい】。

(出典 未発刊)

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