佐賀市成章町 宮地ニワさん(明39生)

 お婆さんとおって、お爺さんの柴刈りに行くたて、

その、雀のなた、怪我しとっとば拾うて来なったたんたあ。

そしてとても可愛がって、餌をやったい水を飲ませたいして可愛がって育てなっぎぃ、

お爺さんにほんに懐(なち)いて、手のひらに止まったい肩に止まったいしてなた。

そいぎもう、もう大抵、慣れてそがんしたけんが、

「まあ柴刈りにまいちょ行たて来っけんが、

お婆さん、お婆さん、あの、水も飲ませてくんさいの、ご飯も食べさせてくさい」

ち言(ゅ)うて、出て行きなったばってんが、婆さんが、そがんやってくれじなた、あの、

婆さんの糊(のい)つけないよっとば、糊ばひん舐むっじゃかんたあ。

そいぎ婆さんの腹きゃあて、あの、鋏みで舌ばおし切いなろうが。

そいぎチュチュチュチュ言うて、飛んで走っていったもんなた。

そいぎお爺さんの帰って来て籠(かご)ば見なっぎんと、おらんけんが、

「婆さん、婆さん。雀は何処さい行たや行きゃん」ち言いなっぎぃ、

「うん。私(あたい)が糊つけとっぎぃ、糊ばひん舐めたけんが、歯痒(はがい)かったけんが、

その鋏みで舌ばおし切ったぎぃ、チュチュチュち言うて、ちん逃げて走った」ち。

「お前の水も飲ませんじゃったろう」言うて、お爺さんの雀ば尋(たん)ねやなた、

「舌切雀のお宿は何処か」ち、ズーッと山奥さい尋ねて行きなっじゃんかんたあ。

そいぎぃ、

「舌切雀のお宿はここよ」ち言(ゅ)うてから、竹薮から出て来んもんなた。そうしてもう、

「さあ、お爺さん、よう来てくんさったあ」ち言うてもう、

ほとめいてもうそけ酒肴ご馳走出(じ)しゃあてなた、

お父(とっ)たん、お母(か)さん全部(しっきゃ)あ出て来て、その、

「雀を可愛がってくださった」ち言うて、喜うで、そけぇ踊(おど)ったいはねたいなた、

ほんに持て成しすっじゃっかんたあ。

そうしてもう、一時(いっとき)してからお爺さんのもう、

「帰ろう」ち。

「そんない爺さん、また来てくんさいの」ち言うてその、

「おみやげに何が良かかんたあ。

小さか葛籠が良かかんたあ、太か葛籠が良かかんたあ」ち言うぎんたあ、

「うちどま年(とし)寄(よ)いじゃけん持てんけん、小(こま)か葛籠ばそんない貰うて行こうだい」て、

小か葛籠ば貰うて行きないよんもんなた。

そいぎ自分の家(うち)帰って、何の入っとっじゃろうかと思うて、開けてみなっぎもう、

金銀ざいくも宝物のなた、どっさいお金も入っとっけん、

もうほんに喜うでしないよっぎ、婆さんの、

「あんたんごたっ、太かとばなし貰うて来んやったかんたあ。小かと貰うて来て、

私(あたい)が行たて太かとは貰うて来っ」ち、婆さんのなた、行きなっ。そうして太かとば、

「雀のお宿は何処ですか」ち言うて、行たて行きないよっ。

「雀のお宿はここですよ」ちて、連れて行たてすっばってん、

もう酒肴出したったっちゃ、

「もう、そがんといらんけん葛籠の太かとばくんさい」ち言うと。

葛籠の太かとばなたあ、貰うて来ないよっぎもう重(おむ)たしゃ重たしゃたまらんもんじゃい、

途中でもうその宝物の入っとっじゃろうと思うて、開けてみなったぎもう、

こいこそ一つ目小僧てん、蛇てんぬるーっとあげとっとこのあっでしょうが。

そいぎもう、腰ぬかせてもう、婆さんなビックイしてそけほっちぇて

這うて帰なんもんなた。そいぎお爺さんから、

「『ほら、行くことなん』ち言うたとば、聞かじ行くけんが、そがにゃ目あう」

ち言うてから、お爺さんの言うてなた。そいぎぃ、

「本当(ほん)に自分が悪かったけんがご免なさい」ちて。

(出典 未発刊)

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