佐賀市大和町松梅地区(仲)左保幸雄さん

マムシと蕨

マムシと蕨

ヒラクチ(蝮)とナメクジは、仇じゃて。

そいぎ、春先に土手んとけぇ、ヒラクチが昼寝しとったちゅうわけ。

そいぎ、ナメクジが、ヒラクチの周りば、グルっと回って、こぅ、白かとば出したて、でしょうが。そいけん、ヒラクチがその外に出られんごとなったちゅうわけ。

そいぎんと、春先で、ぬっか(暖かい)けん、ヒラクチの下から蕨がパァッと出てきたちゅうわけ。

そいぎんと、マムシは、蕨の上に乗って、ポォンとナメクジの白かとの外に逃げたちゅうわけ。

そいけんが、ヒラクチちゅうのは、蕨に恩義のあっちゅうわけ。

そいけん、どみゃぁ(私達は)、蕨採いぎゃぁ行く時にゃぁ、一番早う見つけた蕨ん汁ば爪に付くっわけ。

そいて、歌詠みもして行くぎよかて。「ひがしやま、こうすのやまの、たち蕨、そのいにしえを忘れたか、まむし」て。

そうすっと、ヒラクチから食われんちゅうて。

こいまで蕨採いぎゃ行て、ヒラクチから喰われたちゅうとはおらん。

そいは、そのからきとって。

(出典 大和町の民話 P19)

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