佐賀市大和町下村 堀サワさん(年齢不詳)

もの言うぐうず

もの言うぐうず

むかぁし、

よかお爺さんと悪かお爺さんのおんさったて。

そいぎ、良かお爺さんが、年の暮れにね、貧乏やったやろね、

今年ぁどがんして年とっか、て思うて、橋の上でさい、

「今年ぁ、年ぁ、どうしてとろう、とろう」て言いよんさったて。

そいぎ、よかお爺さんじゃっけんさい、橋の下から、

「お米でとんさい、お米でとんさい」て声がすって。

そいぎにゃぁ、おかしかねぇて思うて、橋ん下さい降りて行たて見てみたぎ、ぐうず【山亀】のおったて。

そいぎ、ぐうずは もの言わんけんね、こりゃぁ珍しかぁて思うて、そのぐうずば連れてきて、明くる日、町さい連れて行たて。そいて、

「ぐうずのものいい、ぐうずのものいい」て、ふれて歩(さる)きよんさったて。そいぎ、

「何て、くうずのもの言うきゃ。ぐうずのもの言うもんか」て、町のが言うて。

そいばってんが、言わせてみたぎさい、ぐうずの、

「お米でとんさい、お米でとんさい」て言うたてったいね。

そいぎ、もう、こう(とても)金もうけして帰ってきんさったちゅうわけ。

そいぎ、隣のお爺さんが、その話を聞いてね、

「その ぐうずば借してくれんかんた」て来なったて。

そいぎ、良かお爺さんな、そのぐうずば貸しんさったて。

そいぎ、隣のお爺さんな、我がも金儲けすっくしゃぁて思うて、町さい行たてね、

「ぐうずのものいい、ぐうずのものいい」て、歩(さる)きなったて。

そいぎにゃぁとは、やっぱり、

「ぐうずのもの言うもんかい」て言われたもんじゃい、もの言わそうですっばってんが、言わんちゅうわけ、悪かお爺さんじゃっけん。そいぎ、

「こりゃぁ、くせじゃ」て言われてさい、叩かれんさったて。

そいぎ、はらきゃぁて(怒って)ね、そのぐうずば殺しんさったて。

そいて、もう、そのぐうずば、そこにほたいてとんさったぎ【放り捨てていたら】、良かお爺さんの、かわいそうに思うてさい、そいば取って来て、庭ん中の柿の木にかけとんさったて。

そいぎ、晩に、バサバサバサて音のすっもんじゃい、見てみたぎ、そけぇ、金が、こう【たくさん】落ちとったて。

そいぎ、また、悪かお爺さんの借りぎゃぁ来て、庭ん中の柿の木に、そのぐうずの死んだとば吊っとったぎさい、晩に、ドサドサドサて言うもんじゃい、

「ああ、良かばい、こりゃぁ、今夜は、たいてい、良かとの落ちとっばい」て言うて、

朝起きて見たぎ、もう、瓦のかけらてん何てん、汚(きたな)かごたっとばっかい、こうあったて。

そいばぁっきゃ【それでおしまい】

(出典 大和町の民話 P8)

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