佐賀市大和町松梅地区(名尾)古川ユイさん

 

継子と皿竹山

継子と皿竹山

むかぁし、むかぁし、

ある国の殿さんが、橋の上を通いよんさったぎ、その娘さんな、川で洗濯しよんさったて。

そいて、その時分は、雪の降いよったわけやろ。

そいけん、殿さんの、「この川に、この川に、雪ふりそそぐ小娘は、背ぃ太かったら、嫁にとるらん」て言いんさったて。

そいぎ、その娘さんが、歌詠みで、「あの山の、あの山のツツジ椿をご覧あれ、背ぃ低けれど花は咲くらん」て返しんさったて。

そいぎ、この娘はよか娘ばいて思うて、家さいもらいに来んさったわけ。

そいぎ、おさんな二番お母さんやったけんが、そのしょてい(最初)の子供ばやるよいか、自分の子ばやりたかわけ。

そいけん、自分の子ば出しんさったて。

そうしたぎ、殿さんが、鉢に塩を入れてね、松の木をちょっと刺して、「こいで歌詠みせろ」て言いんさったて。

そいぎ、「鉢の上ぃ塩ふって、塩の上ぃ松ばちょっきり」て、二番お母さんの子供がそがん言うたて。

そいぎ、「いんにゃぁ、これじゃなか。まだ、居るはず」て言いんさったぎ、その継子ば出しんさったとやろ。しょうがなしぃ、連れてきんさったとやろ。

そいぎ、「皿々と、皿竹山に雪積もる、積もる中にも太る松かな」て、その娘は詠(うた)いんさったて。

そいぎ、殿さんの、「この娘、この娘」ちゅうて、連れていきんさっわけ。

そいぎ、お母さんが、はがいか(悔しい)もんじゃい、箒を投げさすわけ。自分の娘じゃなしぃ前の娘を連れてはしらすもんじゃい。

そいぎ、「母さまの面の憎さよ投げ箒、伯耄の国を取るぞ嬉しき」ちゅうたて。

そん殿さんは、伯耄の国の殿さんじゃったと。

そいばっきゃ(そいでおしまい)

 

(出典 大和町の民話 P7)

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