佐賀市大和町四十坊 上野徳次さん(年齢不詳)

 倉谷の馬鹿(ふうけ)婿が、

秋祭りの、おくんちに嫁の実家へ行きました。

そして、婿どんは明日帰る支度をしながら、

「お母さん、明日は早う帰っけん」と言うと、お母さんは、

「そがん、早よう帰らじよかろうもん。ゆっくりしとかんね」と、

婿どんに言いました。

すると、婿どんは、

「ゆっくりは、されん。明日は夜の明くっとば待って帰らんばでけん」

と言いました。

お母さんは、婿どんが早く帰るからと思って、夜になってから、

「柿ば食べござい」と、言って出してくれました。

ふうけ婿どんは、その出された柿を食ってみると、

おいしいこと、おいしいこと、とてもおいしかった。

もう一つ食べたいと思ったのですが、

婿どんのお母さんから家で注意されていたので、

がまんして柿を食べませんでした。

そして、ふうけ婿どんは、

夜中に、こっそり食べようと思って、

寝床に入ったら、夜明け前に目が覚めました。

そして、寝床から起き出し、

柿の木に登って柿をちぎって食べ始めました。

すると、嫁のお母さんが、婿に柿の土産(みやげ)を

持たせてやろうと思って、柿の木のところまで

竿(さお)を持って、ちぎりに来ました。

ふうけ婿どんは、驚いて、

柿の木に、しがみついて身を隠しました。

お母さんは、まだ夜だったので、

柿が、よく熟しているのがわかりませんでした。

その時、ふうけ婿どんは、きんたまを出していたのです。

その、きんたまが月夜で光っていました。

お母さんは、きんたまとはわからず、

よく熟していると思い、竿で、はさんでねじ切ろうとしました。

ふうけ婿どんは痛いけれど、

知られると、みっともないので、がまんしました。

お母さんは力強くねじ回すけれども、

なかなか千(ち)切れませんでした。

ふうけ婿どんの、きんたまは死んだように延びてしまいました。

お母さんが余りに、ねじっていたので、

ふうけ婿どんは小便をもらしてしまいました。

そして、小便が下に流れ落ちました。

お母さんは、

「ありゃあ、これはもう渋くなったたぁ」と、

他の柿を竿で取りはじめたと言うことです。。

佐賀の民話1集 P120

(出典 佐賀の民話1集 P120)

佐賀弁版 TOPへ