佐賀市大和町仲 山本 清吾さん(明36生)

 むかぁし、

山伏(ヤンボシ)さんが、蕎麦(そま)畑を通っていたら、

野狐(ヤコ)がそこに昼寝していたそうです。

それで、山伏さんが、ひとつ、びっくりさせてやろうと思って、

野狐の耳に法螺貝(ほらがい)を付けて、ひどく吹いて鳴らしたそうです。

すると、野狐が驚いて、

「ケンケンケン」と鳴いて逃げて行きました。

その時は、山伏さんが勝ったけれど、

次にまた、その田舎道を通っていたところ、

日暮れになり、前から葬式の行列が来ていました。

それで、山伏(ヤンボシ)さんは、

「こりゃあ、葬式の通っ。縁起の悪か」と言って、

木の上に登って通り過ぎるのを待ってました。

ところが、その葬式の行列は、こともあろうに、

山伏さんが登っている所の木の下に棺桶を埋めたのです。

葬式の行列が帰った後、棺桶の中から、

生焼けした死体が出て来て、木に登って来ました。

それで、山伏さんは、もう、どうすることも出来なく、

ちょうど、反対側が川だったので、

「彦山権現さんのオイトマゴイ」と言って、

その木の上から川に跳び降りました。

すると、川の中と思っていたところは、蕎麦畑でした。

そいでばっきゃ【それでおしまい】

(出典 新佐賀市の民話 P21)

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