佐賀市三瀬村唐川 男性(名前・年齢不詳)

 三瀬に卒塔婆(そとば)の堰(せき)と言うのがあります。

そこは、むかし、

その堰が大雨で荒れに荒れて、

三内(さんない)【富士町を中心とした山間部の呼称】の人達が

いくら堰を作って川の水を止めようとしても、

まったく、堰が止まらなかったそうです。

ある日のこと、

みんなが話し合いをしていたところに、六部さんが通りかかりました。

それで、六部さんに、

「この堰は、どがん【どのように】したら止まろうか」と尋ねてみました。

すると、六部さんが言うには、

ここにいる人間の内、誰かの履物(はきもん)が、

足半(あしなか)と言って、草履の半分しかないのがあります。

その足半の緒が、

「左ないの者(もん)ば履いた人間がここにおっ。

その人間ば、人柱にして堰に埋ければ、必ずこの堰は止まる」と言いました。

人夫たちは、みんな震え上がって自分の足半を見たそうです。

しかし、人夫たちは誰も、それを履いてませんでした。

そして、よく見たら、六部さん自身が履いていたそうです。

六部さんは目が見えないので、自分が履いていると分かりませんでした。

すると、

「あー、六部さん、お前さんが履いとったい」とみんなが言って、

その六部さんを人柱にして埋めたそうです。

すると、大水がぴったりと止まって堰(せき)が出来たそうです。

そして、そこには六部石と言う大きな石が置いてあります。

それが、堰の由来(いわれ)です。

(出典 新佐賀市の民話)

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