佐賀市三瀬村唐川 男性(名前・年齢不詳)

 神功皇后が朝鮮征伐の時、

豊前の国から持って来られたそうです。

そうして、この杉が栄えたら、

戦勝は間違いないだろうと言うことで、

杉屋敷にお立てになったと。

そうしたら、その杉がやがて成長し、

朝日の影が隣の部落までかかいよったと。

夕陽の影も隣の部落までかかいよったと。

そうしたところが、

そこに孫太郎と言う樵(きこり)がおったそうですよ。

その孫太郎が、その杉の神木を倒すことになったそうです。

そいで、鉞(まさかい)で切って、そうして翌日見たら、

切った所がつながって、少しも切れとらんやったそうですよ。

そいもんですから、こりゃ神木じゃから、

どがんしたら切り倒せるやろかて思い寄ったら、

ある晩、枕元に、白髪の老人がたって、

「孫太郎、お前の鉞には、血流しが入っとらん。

明日(あしちゃあ)、鍛冶屋ァ行たて、川て言う血流しば付けろ」て言いなったて。

そいけん、次の日に鉞(まさかい)に、

川て言う血流しを付けて切ったところが、完全に倒れたと。

そいて、倒れてしもうた時には、孫太郎の姿も見えなくなっていたと。

そいけん、孫太郎と言う人は杉の木の神木の身代わりじゃったろうと、

里人がそこに孫太郎神として祀るようになったて。

お宮の祭り旧暦の十一月十七日です。

(出典 新佐賀市の民話 P8)

標準語版 TOPへ