肥前の蛙と筑前の蛙 作：竹下久美
佐賀市三瀬村唐川 藤井尚弘さん（明39生）
語り 原口照代さん
むかぁし、
筑前の蛙（ビッキー）が、
今日は肥前見物に行こうと思って、
筑前の方から三瀬峠を、ボチボチ登って来ました。
そして、肥前の蛙（ビッキー）も筑前を見物しようと思って、
肥前の方から三瀬峠を登って来ました。
そして、二匹は三瀬峠でバッタリ会いました。
すると、、筑前の蛙（ビッキー）が、
「肥前の蛙（ビッキー）どん。
貴方（あさん）どこさい行きよっかい。
俺（おりゃ）あ、今日は陽（ひ）が良かけん【天気が良いから】、
筑前見物に行きよっばい。」と言ったら、
「俺も貴方と同じこっ、筑前見物に行きよったい」と、
お互い、あいさつをしました。
それで、
「もう、ここは三瀬峠じゃっけんが、肥前も筑前も直（じき）【すぐ】たい。
見晴らしが良かけん、立って両方ば見てみゅうたい」と言って、
一緒にそこで立って眺めていました。
そうしたら、蛙（ビッキー）の目玉は頭の後ろに付いているから、
筑前の蛙が、
「肥前も筑前も同じことやっかい。もう行かんがましばい」と言ったら、
肥前の蛙（ビッキー）も、
「本当（ほん）に貴方（あさん）の言うこったい。
こいから先さい行くよいか、もう帰ったがまし」と、
もう二匹とも見物をやめて、三瀬峠を下って帰りました。
蛙（ビッキー）は、自分の目玉が後ろにあるから、
自分が来た方向しか見えなかったそうです。
（出典 新佐賀市の民話 P6）
佐賀弁版 TOPへ
