佐賀市巨勢町牛島上 福井武次さん(年齢不詳)
むかし。
あるところに住む馬車引きが町へ大根売りに行っていた。
すると山婆が出て来て、
「大根ば、くれんない【分けてくれないなら】、わがは、うち食うじゃ」
と言った。
馬車引きは恐ろしくなり、山婆に大根を一本ずつ与えて行っていた。
とうとう大根はなくなってしまった。
馬車引きは、
「これで、もうなかじゃ。もう何くりゅうもなか」
と、山婆に言った。
「馬の足ばやれ!」
と、山婆は腹立てて言った。
馬車引きは恐ろしくなり、馬の足を一本ずつ山婆に与えた。
馬の足の最後の一本を山婆が食っている時、
馬車引きは今度は自分が食われては大変だと思って、
逃げ出してしまった。
そいばぁっきゃ。
(出典 佐賀の民話1集 P99)