佐賀市長瀬町 納富信子さん(大14生)
父の話によると、
有明海で漁をしよったら、いっつも同じ所(とこ)に船が止まるてね。
毎晩、同じ所に船が止まってしまうて。
そいけん、ある日、そこに竿ば立てて潮待ちしとったらね、
雨の少し降って来てね、何か、海の先の方に、
「ジュウジュウジュウジュウ」ちゅうて
火の付くちゅうもんね、不知火の火の。
そいでん、まーだ、時間のあっけんて思うて寝っとったらさ、
人の呼びよっごたっ声のすって。
そいけん、何か、おかしかねぇーって思って、
そこに網ば打ったぎね、骸骨のかかってきたて。
その骸骨の上に船の来(き)とったとね。
そいけん、やっぱい遭難した人達の霊魂が船を止めるとでしょう。
そいから、船幽霊は、
「アカカスイば貸せ」ちゅうて来るちゅうもんね。
「アカカスイ」ちゅうとはね、潮水を汲みだすとさい。
柄杓の太(ふと)かと。潮水をアカちゅうけんね。
そいば、
「貸せ」ちゅうて来(く)っけん、その底ば抜いて貸さんばらんて。
そがんせんと、
「船ば沈めらるっ」て言いよったですよ。
(出典 新佐賀市の民話 P30)