佐賀市金立町 野田トシさん(大2生)

 むかし、むかし

飴がた屋さんのあったて。

【水飴を練って切った菓子。妊産婦の滋養に良いとされている】

毎晩、遅うなっぎ、必ず、飴がたば買いに来(く)っ、女の人がおったて。

店ん人は、毎晩その女の人が来(く)っけん、

「おかしかねぇ、何か深いわけがあっとやろーか」て思っとったらしか。

そいで、その晩な、その女ん人が飴がたば買いに来(き)んさったけん、

わからんごと後ば付けて行きんさったぎぃ、

その女ん人は、寂しか墓ん所(とこぇ)行きんさって、

いっちょの【一つ】墓ん中に消えんさったて。

その店ん人は、おかしかごと思うて、

その墓ん側(にき)で、ようして聞きよんさったぎぃ、

何じゃい、お金ば数ゆっごた音んしたり、

そいで、子供に飴がたじゃい何じゃい食べさせすっごた音のしよったらしか。

こいは、何じゃい、あっやろう【訳があるだろう】と思いんさって、

次ん日、村ん人と、そけぇ行って、墓ば掘ってみんしゃった。

そいぎ、そこん中に、毎晩、飴がたば買いに来よった女ん人のが、

腹の太うなっとたまんま、埋められとったて。

そいぎ、そいで、子供だけは死なんで産まれてたて。

昔は、埋むっ時ない、絶対(ぜっちゃあ)一文銭ば入れとかんばて。

そいで、飴がたば買いに来んしゃって、そん子供に食べさせよったごたっ。

そいで、埋むっ時ない、そんままぎ、いかんて。

腹ん中から子ば出してからじゃんと。

子の生きとっけん、お母さんの幽霊になって、

食べさせしゅうで、買いに来(く)っらしか。

そいばぁっきゃ(それでおしまい)

(出典 新佐賀市の民話 P25)

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