泥棒と狼と古屋の漏り

佐賀市諸富町三重　糸山定雄さん（明39生）

　むかしむかしの、ずっと大昔

あるところに、爺さんと婆さんがいました。

まぁ、その家は古くて、ちょうど俺の家のように雨が降ると、

ジュクジュクと雨漏りがして、盥（たらい）をあっちこっちに

置いておかないといけないくらいでした。

それで、雨が降るのが一番、怖（えす）かったわけですね。

ある日の晩、爺さんと婆さんと二人（ふたい）で、

「ありゃあ、今夜は雨の降っばん。

盥（たらい）どん、いっちょ【一つ】敷いとかんばぁ」と言ってから、

「何ちゅうたっちゃあ、やっぱい、『古屋の漏り』が一番怖かもんのぅ」と、

爺さんと婆さんが、ボソボソと話だしました。

その時に、ちょうど泥棒が天井裏に隠れていて、

爺さんと婆さんの言っているのを聞いていました。

　泥棒は、

「そいぎ、今夜は、『古屋の漏り」ちゅうのが出て来（く）っちゃあてか。

俺（おい）は、どがんすっかぁ」と言って逃げ出したようです。

すると、そこの家の馬を食べようと狼も来ていたようでした。

逃げる泥棒は狼とぶつかって、慌てて馬に飛び乗ろうとしたけど、乗れずに、

尻尾だけ握って、引きずり回されました。

　そいばっきゃくさんたぁ【それでおしまいだよ】

（出典　新佐賀市の民話 P35）