佐賀市川副町鰡江 於保モヨさん(明33生)
むかし、
奥山に妊娠した野狐(ヤコ)のおったそうですもんね。
その野狐が産気づいって言うで、
男野狐が人間に化けて産婆さんば呼びに来んさったて。
そいけん、産婆さんが連いて行ったぎ、
もう立派な御殿のごたっ【ような】家じゃったて。
そいて、産婆さんが無事にお産ば、させてやったぎ、
「家(うち)ぃ、今晩は泊まっとけぇ」ちゅうて、
産婆さんに絹のごたっ立派な布団ば着せて寝させんさったて。
そうして、明けん時分に、産婆さんば送っていたて、返しんさったて。
そいぎ、産婆さんが、あくる日行たてみたいば【みたら】、
御殿てん何てん、何ーんもなかったて。
そいけん、ありゃあ野狐から騙されたばいねーて、思うとったて。
そいから、四、五日してから、産婆さんの家ぃ、
こっそい、礼ば持って来た升(しょう)とお金じゃったて。
お金は立派に紙に包んで、そいから、酒二升も
産婆さん方さい持ってきて置いちゃったて。
そいけん、ありゃあ、本当(ほん)なお金じゃいかん【だろうか】、
て思うて、銀行に持って行たぎ、本当のお金やったて。
(出典 新佐賀市の民話 P40)