佐賀市川副町中小路 福岡 ヨシさん(明33生)

 一番嬶(がか)さんの子と二番嬶さんの子とねぇ、

二人して椎の実拾いや行たち。

そいぎ、一番嬶さんの子んとは、袋の底が空(あ)いとるもんやから、

底から椎の実が落ちて、いくら拾うたっちゃ、いっちょん【少しも】溜まらんて。

二番嬶さんのとは、くぅ【沢山】溜まっちじゃんねぇ。

そいぎんと、二番嬶さんの子が、

「兄ちゃん、もう溜まったけん戻ろい」ちゅうばってん、

「まぁーだ、俺がとは溜まらんけん、お母さんから怒らるっけんが戻られん」ちゅうて、

一番嬶さんの子が言うて。

そいぎ、

「良かやんねぇ、俺の分ば分けてやるよう」ちゅうて、

二番嬶さんの子が言うばってんねぇ、

「いんにゃあ【いいや】、怒らるっけん」ちゅうて、

一番嬶さんの子が帰ろうとせんて。

そいぎ、二番嬶さんの子ばっかい、帰ったて。

そいて、二番嬶さんが、

「兄ちゃんな、何故(なし)帰って来にゃったぁ【来なかったのか】」て言わすぎ、

「兄ちゃんな、『まぁーだ、溜まらんけん、後から帰って来(く)っ』ちゅうた」ちゅうて、帰って言わしたて。

そうしたいば【そうしたら】、一番嬶さんの子は、暗(くろ)うなって来たけん、神さんのお堂に行たて、

「ここに、泊まらせて下さい」ちゅうて頼みなったて。

そいぎ、神さんのね、

「ここは泊まって良かばってん、鬼どんが来(く)っ。

そいけんが、お前は、鬼どんが来た時ゃあ、この甚八【竹の皮で作った蓑】ば着て、

バタバタバタさして、『コケコッウ』ちゅうて言え。

そいぎ、鬼どんが『夜の明けた』ちゅうて、帰っ」て言いんしゃったて。

そいぎんと、一番嬶さんの子が泊まっとったら、

夜中に鬼どんが来たもんじゃい、神さんに言われたごと、バタバタバタさして、

『コケコッコー』ちゅうたら、逃げて帰ったて。

そうしたいば、まあだ、明るくならんやったもんじゃい、また戻って来たて。

そうしたぎんと【そうしたら】、またバタバタさして、

『コケコッコー』ちゅうたばってんが、つい、その笑ってしもうたて。

そいぎ、

「笑い声のした。誰かおるに違いなか」ちゅうて、

捜したぎ、見つかって、殺されたて言う話ば聞きよりました。

そいまあっきゃ【それでおしまい】

(出典 新佐賀市の民話)

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