佐賀市東与賀町今町 吉田ハルさん(明44生)
嫁さんば、もらわしたて。
そいぎ、十日ばっかしたら、お腹の大きゅうないござったて【大きくなられたて】。
そいぎ、姑嬶(がが)さんの、
「お前は、土産どま【でも】持って来とらっさんか」て言いなったて。
そいぎ、その嫁さんの、
「土産じゃなか。私(あたしゃあ)は、毎日、何回でん屁ばふらんぎね【屁をしないと】、
がん【こんなに】お腹の大きゅうなっ」て言いんさったて。
そいけん、
「そりゃあ、屁どんふっとや、容易(たやす)かこと、
ふいござい【ふりなさい】」て、姑嬶さんの言いなったて。
そいで、
「ブッ、ブッ、ブッ」て少しずつ、ふいなったぎ、
「そがんせじぃ、どっちみち、いっぺんに、ちいふらんね」ち言われたもんじゃぃ、
「そんならね、私(あたい)がここからふっけん、姑嬶さんな、中柱を抱えといて下さい」て言いなって、
一、二(にいー)の三で、ブーッって、ふらしたてんもんにゃあ、
姑嬶さんな、中柱ば抱えちいとらしたばってん【中柱をしっかり抱えていたけど】、
前の畑ぇ飛ばされて、大根ば引いて屋根の上さい、上がっとらしたって。
そいぎ、通りがかりの婆さんのね、
「貴方(あーた)、なーいて【どうして】、そがんとこに、大根ば引いて上がっとっかんた」て言いなったぎ、
「あなた、今先、裾まいく【風】の来て、ここまで飛うで来た」て言いなったて。
そいばあっきゃ(それでおしまい)
。
(出典 新佐賀市の民話 P51)