佐賀市久保田町快万 立野ヨシさん(大元生)

 むかぁし、お寺の小僧さんがね、

「大晦日の晩に火ば消すことなん【消しては駄目だ】」て

言われとんさったとば、火ば消して、しもうてさい【しまって】、

もう困っとらしたと。

そいぎ、どがんすっきゃねぇ【どうしようか】、

このように火ば、つっ消ゃあて【消してしまって】、

やかましゅう【酷(ひど)く】言わるっと思うて

心配しとっとけぇ【心配している所に】、向うから、

晩遅うにねぇ、提灯を点けて来ないよったて。

そいぎ、その提灯の火ば、貰おうで思うて、陰から見よったとじゃろう。

そうしたぎんと、その火が近寄ってくんもんじゃい、

「その火ばくいろ【くれ】」て、その小僧さんが言うたぎね、

「火はくるっけん、この棺桶も預かってくれんか」て言わしたて。

「死体が入った棺桶ば預からんか」て言いなったて。

そいぎ、火は欲しかもんじゃい、その棺桶ばどこに置くかちゅうて、

心配しよったばってん、しよんなかもんやけん【しょうがないので】、

裏の小屋に入れてね、そいて、その火種もそこに置いときなったて。

そいぎ、和尚さんの、火種ば貰いに来んさって、

「火種はどこか」て聞きんさったて。

そいぎ、小僧さんの、

「火種は取っとっ【取っている】」て言いんさっもんじゃい、

「どけ、取っとっかい」て聞きんさったぎ、

「裏の小屋」て言うたもんじゃい、

見ぎ行たぎね、小屋の中から、何かピカンピカンしよってやんもん。

そいけん、和尚さんの、

「ありゃあ、火種と違う」て言いなって、小屋の中に入ってみなったぎ、

お金のワクワクしよったて。

瓶(びん)の中でお金のワクワクしよったて。

そいぎ、その小僧さんは、

人から良(よ)うさるっごとないなったて【良くしてもらうようになられたそうです】。

(出典 新佐賀市の民話)

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