佐賀市下無津呂 合瀬 光時さん(明42生)

 むかーし、むかしのう、

男どんが、大根(じゃあこん)引きに行ったそうです。

そうして、大根をたくさん引いて、

馬に載せて、戻って来たら、

藪(やぶ)の中から蛇が出て来ました。

そして、蛇が、

「こりゃあ、こりゃあ、大根 一本食わせんか。

よーしとんない【静かにしているなら】、

我がまで、いち食うじゃあ」て言うもんじゃい、

「そんない、一本くりゅう【やろう】だい」と言って食わせたら、

「まー【もう】一本食わせろ、まー一本食わせろ」と、

大根を全部食べてしまいました。

それで、男どんは様子を見て逃げようとしたら、

「こら、待て」と蛇が山の中を追いかけて来ました。

蛇は、

「馬の足ば一本食わせんか」、

男どんは、

「馬の足ば一本食わすっぎぃ、

三本足では戻ることが戻いえん【できない】、堪忍してくいござい」、

そして、蛇は、

「そんないば、我がまで、いち食うじゃぁ」と言いました。

それで、馬の足を一本やったら、すぐ食べてしまった、

「もう本食わせろ」と言い出しました。

それで、男どんは、

「もう一本食わすっぎ、

鶏(にわとい)のごとなってしもうて、動(いご)きわえん」と、

「そいない、我がまで、いち食うじゃぁ」と言うから、

とうとう四本の足とも全部食べられてしまって、

男どんは、泣いて帰りましたと。

ばっきゃ【おしまい】

(出典 新佐賀市の民話 P16)

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